棚卸は「価値を生まないのに時間を食う」業務の代表
棚卸が好きな人に、私はまだ会ったことがありません。
売上を生むわけでもなく、商品名と数を数えて記録するだけ。なのに地味に時間がかかり、紙やスマホのメモから Excel に手入力する段で必ずミスが混ざる。やり方が人によって違って属人化する。月末や期末に「あれ、またこの作業か」と気が重くなる——個人事業主・小規模事業者なら、心当たりがあるはずです。
こういう 「価値を生まないのに、定型で、手入力が多い」業務こそ、AI で自分サイズのツールを作って潰す価値がある と私は考えています。今回はその一例として、棚卸用のバーコードスキャナを作って公開しました。
つくったもの:スマホがバーコード在庫スキャナになる
実物がこちらです(スマホで開くのがおすすめ)。
- 棚卸スキャナー → https://apps.lumikit.dev/salon-inventory-scanner/
- 使い方ガイド → https://apps.lumikit.dev/salon-inventory-scanner/manual.html
できることはシンプルに 3 つだけです。
- スキャン — スマホのカメラで商品のバーコード(JAN)を読むと、在庫リストに自動で追加される。同じ商品を続けてかざせば数量が増えていく
- 登録は一度だけ — 初めて読む商品は商品名を 1 回登録すれば、次回からは名前を聞かれず数量が自動で +1。バーコードが無い物は手入力でも追加できる
- CSV 書き出し — 数え終わったら CSV に書き出して、そのまま Excel で開ける(バーコード / 商品名 / カテゴリ / 数量)
インストールも会員登録も不要。URL を開くだけで動きます。
何が「効率化」なのか(設計の狙い)
このツールの狙いは、棚卸の作業を 「数える」と「記録する」に分けて、後者をゼロにする ことです。
- 紙に書いて、あとで Excel に手入力——という二度手間と転記ミスをなくす
- 商品マスタ(バーコードと商品名の対応表)が育つほど、次回は「ピッ」だけで終わるようになる
- 出力した CSV は、発注リストや月次の記録にそのまま使える次の入力になる
もう一つ大事にしたのが データの扱い です。入力した在庫情報はすべて端末(ブラウザ)の中だけに保存され、外部のサーバーには一切送られません。お店の在庫データが外に出ないので、安心して使えます。
正直な現状:実店舗での本番棚卸は、これから
ここはこのブログの方針どおり、正直に書きます。
検証していないことを、それっぽく書かない。一次情報を優先し、推測は「推測」と明記する。
現時点で確認できているのは、ツールが設計どおり動くことまでです。自分のスマホでバーコードを読み取り、CSV 書き出しまで通ることは確認しました。一方で、実際の美容院で 1 回分の棚卸を丸ごと回した結果は、まだ取れていません(これから店舗オーナーと一緒に試す段階です)。
なので「棚卸が何分短縮できる」といった数字は、今は 推測 です。実測できたら、ビフォー / アフターの数字とつまずいた点を、この記事に追記するか別記事で報告します。ツールは「作って終わり」ではなく、現場で使われて初めて価値が分かる、という前提で続けます。
なぜ非エンジニアでも作れたのか(Claude Code)
このツールは Claude Code で作りました。出発点は、数日前に作成した素朴な CSV ジェネレーターです(その記録は Claude Code で作る毎日のミニアプリ に書きました)。
そこから、
- カメラでのバーコード読み取りを足し、
- ロジックをテストできる形に整理して自動テストを通し、
- 公開しても問題ないようセキュリティ(CSP やデータの取り扱い)まで確認して、
本番の URL で公開する——というところまで持っていきました。コードを一行も手で書かなくても、テストやセキュリティの観点まで含めて "ちゃんとした" 小さなツールが作れる というのが、いま起きていることです。
この「型」は棚卸以外にも効く
棚卸はあくまで一例です。汎用の型として取り出すと、こうなります。
「価値を生まない × 定型 × 手入力が多い」業務は、自分サイズのツールで潰せる候補。
たとえば、
- 領収書・経費の整理
- 予約や問い合わせの記録
- 定型の見積もり・請求書づくり
- 顧客への定型連絡
このあたりは「外注すると高い、市販ツールは多機能すぎて月額がもったいない、でも手作業は面倒」の三すくみになりがちです。そこに "自分の業務にちょうど合うだけ" の小さなツール を差し込めると、効率化が一気に進みます。
作る / 買う / 我慢する の判断軸
とはいえ、何でも自作すればいいわけではありません。私が使っている雑な判断軸を置いておきます。
- 頻度が高く、手順が決まっている → 作る価値が高い
- 市販ツールがあるが、自分の使い方には 2 割しか合っていない → 自作 or 軽い自作を検討
- 複雑な計算・法令・お金が絡む(会計や申告など) → 素直に専用サービスを買う
- 年に 1 回あるかないか → 我慢する(作る時間のほうが高くつく)
棚卸は 1・2 に当てはまったので作りました。
試してみてください
在庫を持っている方は、手元の商品で気軽に触ってみてください。スマホで開けば、その場でバーコードが読めます。
「うちのこの作業、AI で何とかなる?」という "面倒" があれば、それ自体が良いネタです。気軽に相談してください(hello@lumikit.dev)。実際に作って、この場で記録していきます。